【技術書ライティング・補遺】「書けないときはどうしますか」

既刊『はじめての技術書ライティング』では、できるだけ客観的な記述、つまり技術的な解説に努めたため、主観の強いネタや、メンタル要素の多い話題などについては書籍から意図的に落としました。そのままではもったいないネタや、いただいたご質問について、『技術書ライティング・補遺』として採りあげていこうと思います。


さて、書けないときの対策についてですが、「書けないとき」という状況は3種類に分けられると思います。

  1. 書くべき内容を理解できていない
  2. どのように書けばよいのかわからない
  3. モチベーションが上がらない

「書くべき内容を理解できていない」とき

これはもう、ひたすら理解するしかありません。技術書なのですから、理解せずに解説するのは無理です。

理解できないからといって適当に用語をまぶしてごまかしても、編集者から「どういうことですか」「丁寧にお願いします」「用語OK?」などと赤字を入れられるはずです。

自分の場合は、こういうときは1次資料に立ち戻って、構成する要素をバラし、1つずつテストして理解を積み重ねていきます。信頼できる相談相手がいる場合は相談してもよいと思いますが、まずは自分で理解して、答え合わせをするくらいのつもりでないと、他人に解説する原稿は書けないと思います。

この段階では原稿の執筆はできないので、ツールは不要です。テーマに選んだテクノロジーのドキュメント類を1行でも多く読み、実際に操作してみましょう。公式のユーザーガイドやチュートリアルビデオからヒントを得られることもよくあります。

「どのように書けばよいのかわからない」とき

書くべき内容は理解していても、書くべき順序や表現がわからないときがあります。これが狭義での「書き方に悩む」場合でしょう。

最も汎用的な方法は、小さくバラすことでしょう。文章にならないほどまで短く、「AはBです」程度の集まりまでバラします。『はじめての技術書ライティング』の「5.3.6 1つの文に複数のトピックを入れる」「5.3.7 修飾の関係がわからない」を参考に、解説内容を短い文の組み合わせで表現してみてください。それを眺めていると、最も重要な語句が見えてきて、文章として整理できるようになるでしょう。これ以上のことは長くなるので、また稿を改めてご案内したいと思います。

この段階で使うツールとしては、簡単でも文章になるのであればアウトライナーが、語句くらいでしか並べられないレベルであればマインドマップがいいと思いますが、伝統的な情報カード、場合によってはマトリクスやExcelなどもよいでしょう。好みで選んでください。

「モチベーションが上がらない」とき

こればかりはなんともいえません。クリエイティブな才能を持ち合わせているはずのプロの作家や漫画家でさえそういうことはよくあるのですから、何とか気が向くように自分を仕向けていくしかないでしょう。

作家のエッセイなどを読んでいると、さまざまな方法を試していることがわかります。とにかく毎日机にかじりつく、1日数文字でいいから書き続ける、書く気にさせる自己暗示的な小道具を用意する、昼寝をする、俳句を詠む、音楽を聴く、散歩に出る、かなり本気で掃除をする、運動をするなど、本当に多様です。

個人的には、仕事机から離れて、美術展のカタログや、漫画家のイラスト集を眺めることが多くあります。最近気に入っているのは『横尾忠則全版画 HANGA JUNGLE』です。

もっと実用的な方法、つまり時間が惜しいときは、書けるところから書くというものがあります。つじつまを合わせるため、おそらく後から書き直すことになりますが、技術書の場合はほかの章であっても比較的書きやすいところがあるでしょう。

あるいは、執筆をやめて推敲に徹するのもいいと思います。すでにできあがっている部分をプリントまたはPDF化して読み返していると、執筆に対する意識のハードルも下がってきます。

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