七つ道具 ②辞書by物書堂|言葉の基礎
ぼくの仕事の「7つ道具」の2つめは、「辞書by物書堂」だ。原稿を書いたり編集したりして食いぶちを稼いでいるのだから、当然、信頼できる辞書は必須であるし、それがいつでも手に届くところにあることが重要だ。
辞書by物書堂とは
「辞書by物書堂」は、「物書堂」というソフトハウスが開発している辞書アプリだ。iOS、iPad OS、macOSで利用できる。「辞書」アプリ自体は無料で、コンテンツとなる辞書を1つずつ購入する仕組みである。1度購入した辞書は、上記3つのOSで使える。サブスクリプションではなく買い切り制で、期間限定のセールが行われることもある。
→「辞書 by 物書堂」
販売されている辞書のラインナップは多岐にわたり、多くの出版社から多くのものが発売されている。普通の国語辞典だけでも、精選版日本国語大辞典をはじめ、大辞林、新明解、大辞泉、明鏡などの10種類がある。ほかにも、日本語では類語、漢和、古語などがあり、もちろん外国語の辞書も多数ある。
なぜ辞書by物書堂か
辞書自体はATOKのオプション辞書も併用していて、むしろ日常的にはそちらを使っている。それでも「辞書 by 物書堂」を重視する理由は3つある。
1つめは、ATOKとはちょうど補完する関係にあること。たとえばATOKには、広辞苑や共同通信社記者ハンドブックがあるが、「辞書by物書堂」にはない(代わりかどうかは分からないが、「岩波国語辞典」や、三省堂の媒体向け用語辞典である「使える!用字用語辞典」がある)。しかし、「辞書by物書堂」には日国があるし、漢和辞典は手書き入力ができるiPhoneで使うほうが便利などのメリットもある。
2つめは、常時携帯しているiPhoneで、信頼できる辞書を確実に使えること。クラウドのサブスク辞書サービスでは、辞書を引きたいときにいつも電波が入るとは限らないし、たいてい使い勝手は悪いし、週末であっても昼間にメンテナンスで使えなくなるのは大問題だ。「辞書by物書堂」は、「インストール式(オフライン利用可)、買い切り制、アプリは1つ」という分かりやすさがいいのだ。
3つめは、辞書が次々と追加・改訂されること。仕事のことだけを考えればATOKのオプション辞書のほうが便利なのだが、次々とあれこれ発売される雰囲気ではまったくない。一方、「辞書by物書堂」は、Appleシリコン以来はMacでも使えるようになったし、新しい辞書が発売記念セールで出ると、辞書好きとしては気になってしまう。
付論
◎「辞書by物書堂」で残念な点は、AndroidやWindowsで使えないことだ。Windowsはともかく、Androidはなんとかならないだろうかと思うが、まあ無理だろう。Androidへの乗り換えを検討したときに、iOSにしかないアプリがいくつもあって早々に挫折したのだが、「辞書by物書堂」もその1つである。辞書の買い直しも考えたが、AndroidとWindowsの両方で買い直しになるのは厳しい。
◎紙の辞書はもうまったく使っていない。重いし、広げる場所どころか置く場所もない。「紙の辞書は自然と近くの言葉も目に入るから云々」と言われることもあるが、そもそも引かなければ意味はない。いつも持ち歩くiPhoneか、画面の大きいiPadで「辞書by物書堂」を使うほうがよっぽど教養になる。
◎電子辞書に関しては、以前からカシオの製品を使っていた。最初に買ったのは広辞苑第5版が収録されているXD-GT6800という機種で、フランス語とドイツ語の別売辞書も買った。広辞苑が第6版になったときに買ったXD-A6500は、ペン入力ができるので漢和字典が引きやすくなった。第7版になったときに買ったXD-SR6500は、ディスプレイがカラーになり、キーが減って操作方法が単純になった。この3台は微妙にコンテンツが異なるため、すべていまも手元にあり、居間に置いたり、普段使わない辞書が必要になったときに使っている。
ただし、第7版を収録した機種は高校生の学習用という位置づけが強化され、辞書よりも英語の動画のような学習コンテンツが目立つようになった。学習コンテンツを買うのであれば、タブレットを使うほうがずっといい。また、その頃から入れ替わりに「辞書by物書堂」のほうを多用するようになった。世話にはなったが、将来、広辞苑第8版を収録した製品が発売されても、おそらくもう買わないだろう。
◎Webの辞書はほとんど使わない。もちろん必要があればWikipediaも使うし、専門辞書が必要なときはコトバンクも使うが、Webへアクセスするほうが面倒に感じる。