キーボードの話(5) ──「かな」「英数」キーが登場。ドラッグ&ドロップこそMac。

LinuxとMacの両方にFKB8579を並べてLinuxとMacにつなげていた時期がありました。まったく同じ配列のキーボードを並べて使うのは頭を切り替える必要がなく快適でした。いまならParallels DesktopやVMware Fusionを使って1台で済ませられますが、仮想PCが実用的でなかった時代は実機を並べるしかなかったのです。

そのうちにMacで原稿を書くことが増えたので、Mac OS Xの正式版が登場したあたりのタイミングでMacでは意図的にApple製のキーボードを使うようにしました。新しく登場した「かな」「英数」キーに慣れるためです。InDesignやMac OS Xの解説書を書くことになったので、Mac OS Xを常用しようと思ったのでしょう。押すキーが1個で済むようになったので、長年使ってきたCommand + Spaceキーからも案外と素直に乗り換えられた記憶があります。

個人的にはキータッチもそれほどきらいではなく、ControlキーがAの左にあるので配列にもたいした不満がなく、しばらくは原稿もシェルスクリプトもこれで書いていたと思います。ただし、見た目に高級感がなく、ControlキーがCommand、Optionと一直線で並んでいるほうが便利なデザイナーさんからの評判は最悪で、持てあました方から何台か頂戴したことさえありました。

後には、さらに巨大になったWirelessキーボードもそれなりによく使っていました。結局使わなかったものの、これは予備でもう1台買い足しました。

Bluetoothのバージョンなのか、何が原因なのかよくわかりませんが、ある時期からうまくMacにつながらなくなり、単3乾電池が4個も必要だったこともあって、何となく使わなくなってしまいました。

この当時、執筆アプリにはメディアビジョンのアウトライナー「アイデアストーム」を使っていましたが、数年でディスコン(開発終了)が宣言されてしまいました。乗り換え先にはもちろんアウトライナーを探しましたが、Microsoft Wordのアウトラインモードが結構使えることがわかり、長いものに巻かれろとばかりにWordを選びました。

Linuxを使っていたのですからEmacsという選択もありましたし、もちろん一時期は必死にM-x -> M-sなどと覚えました。しかし、Emacsにモジュールを追加してControlキーを連打するよりも、アウトライナーとドラッグ&ドロップを使った組み替えのほうに魅力を感じる程度にはMacユーザーですし、ぼくは段落単位でも章単位でも執筆中によく順序を組み替えるので、アウトライナー流の機能は絶対に外せません。しかも、Wordならばもう会社ごとなくなってしまうおそれもありません。

Emacsへいかなかったもう1つの理由はATOKです。Mac版のATOKはバージョンアップのたびによくなっていったし、商用の原稿を書くには信頼できる辞書を使いたかったからです。

Apple純正キーボード、Word、ATOKの組み合わせはしばらくの間続いたと思います。しかし何年か使い込むと、ホコリがたまってきたのか、キーの部品が劣化してきたのかわかりませんが、キーが全体的に押しづらくなってきました。

FKB8579を再び引っ張り出してみたものの、もはや「かな」「英数」キーがないキーボードはつらく感じてしまいます。キータッチは名残惜しかったのですが、原稿書きが仕事のほとんどを占めるようになったので、ある程度のお金を掛けてでも本当にいいキーボードを探すしかないと腹をくくりました。自分から沼へ帰って行ったわけです。

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