キーボードの話(6) ──買えばわかるさ(買わなきゃわからん)。合わなかったキーボードの教え。

キーボードというのはほんのわずかなタッチの違いや寸法の違いで、手になじんだり、世間の評判とは裏腹にまったく合わなかったりします。今回は、ぼくに合わなかったキーボードの話をします。先にはっきりと申し添えておきますが、これは個人的に合わなかったというだけであって、商品としてどうとか、こういうキーボードを好きな方に対してどうこう言うつもりはありません。

ただし、合わなかったとはいえ、買ってムダだったとは思いません。何日も使ってみないとわからないことはありますし、なぜ合わなかったのかをよく観察すると、その後に選ぶべきポイントが明らかになります。

まずはREUDOのRBK-2200BTiです。iPhoneやiPad関係の本を書いていた頃に買ったもので、当時のBluetoothキーボードとしては定番の1つです。ControlキーはUS配列と似た位置にありますが、そもそもiOSでは文節の伸縮や移動がControlキーのショートカットでできないので、これは不問にしました。(いまはできます)

Bluetoothキーボードは別のものを購入したので、ほしい方がいらっしゃれば差し上げます。

見た目やタッチは品番が3〜4桁だった当時のPowerBookなどに近いように思えます。このタッチ自体は嫌いではなかったのですが、二つ折りですので強く押してはいけません。それなのにキーの深さがそこそこあります。ピンのような部品を通してある程度ガタつきを抑えることはできますが、全体の弱さをカバーするほどではありません。

最大の問題はキーピッチが17mmであることです。買ってみて初めて自覚しましたが、ぼくは17mmだと「緊張を維持していれば頑張って打てる」、逆にいえば「緊張を維持していないとすぐにミスタッチする」ことがわかりました。原稿どころかメールひとつ書けない有様だったので、自分の用途としてはすぐにお蔵入りになりました。キーピッチの狭さは、日本のユーザーからは大人気だったのに後継製品がなかったPowerBook 2400を思い出します。

「祝 Macintosh 30周年!! 失敗?名機?評価が分かれるPowerBook 2400|Mac」(週刊ASCII)

以後「キーピッチ17mm」はぼくの鬼門の一つになりました。そのためたとえばポメラは1度も買ったことがありません。ポメラのコンセプト自体は魅力的だったのですが、新製品が出るたびにキーピッチを調べてそっとWebを閉じることになりました。最近では、ロジクールK380や、iPad miniのケース一体型キーボードをあきらめました。

余計なことを言えば、そもそもぼくは極小キーボード(物理)が苦手です。秋葉原へ通勤していた頃にHP 200LXが話題になっていた記憶がありますが、BlackberryにしろPalmにしろ、原稿を書くわけでもなかった時代から生理的に苦手でした。自分だって今となってはiPhone XRを横に持って使うことはあるのに、なんなんでしょう。でもああいったものは継続的に人気がありますし、まとまった文章を書いてしまう人もきっといるのでしょう。

次はロジクールK480です。K380はキーピッチが17mmですが、こちらは19mmです。3台を切り替えてつなげられるBluetooth接続のキーボードで、鉄板を入れてまでモバイル性を切り捨ててスタンドを売りにした製品です。自宅内やオフィス内で持ち歩くには便利な代物ですが、改造して軽量化している方もいるそうです。

しかしこれ、目で見ただけではわかりませんが、キーの段間がほんのわずかに広いため、ホームポジションから上下の段へ移るときに、妙に遠く感じます。キーの横方向の間隔は仕様として掲載されますが、縦方向までは思い至りませんでした。キータッチもK380と比べても安っぽい印象です。ノートパソコンと比べても静かではないので、会議で使うにも難しいように思います。

さらに、製品としてはWindows、Mac、iOS、Androidのすべてに対応することになっていますが、Mac/iOS向けのキーの表示が薄すぎるため、「iOSで@を打つならこのキー」とわかっていても、「”」が目について瞬間的に戸惑ってしまいます。

文句ばかり並べてきましたが、マインドマップやアウトライナーのように断片的な言葉を入力するときや、メール程度の文章であれば便利なので、居間に置いて使っています。ソフトウェアキーボードよりはずっと確実だからです。

合わなかったキーボードと言えばすでに紹介したHappy Hacking Keyboard Lite2 for Macがありますが、それ以外にもここまで1度もあがらなかったものがあります。ノートパソコンのキーボードです。

いまでもノートパソコンのキーボードは全体的に、というか最近買った現行のMacBookも含めてすべて苦手です。客先へ出掛けてとあるテレビ番組のWebコンテンツを作ってサーバーへ上げて帰って来るという仕事を週1回15年間やっていたときはiBookやPowerBookを使っていましたが、気持ちよく文章を書く作業とはまったく違うからできたのでしょう。ThinkPadを買ってみたこともあるし、DELLやHPも使いましたが、結局ノートで原稿を書くことはありませんでした。HP EnvyはScrivenerで使いたいので、何とかもう少し仲良くしたいと思っているのですが。

キーボード選びが難しいのは、店頭で少し触っただけでわかる程度の違いもあれば、買ってきて1週間使い込まないとわからないよさがあったり、まったく好みではないと思っていたのに単なる慣れの問題だったり、慣れれば大丈夫と思っていたらどうしても仲良くなれなかったりすることもあるからです。値段の高さ安さや、身近な知人の評判、ましてや通販サイトのカスタマーレビューなど当てにしてはいけないし、この記事だって真に受けてはいけません。

そして何よりも、上に書いてきたことを全否定しそうなことを言いますが、これが自分の好みだと思っていてもただの思い込みだったり、むしろ慣れを矯正したほうがよかったりすることもあります。

自分にとっての最高の1台を探すまでは、何台も買い換えたり失敗したりするのも仕方のないことです。仕事であれ趣味であれ、快適に打てるキーボードがほしいのであれば、自分であれこれ手に入れて実際に使ってみることが最善と思います。

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