キーボードの話(1) ──ホームポジションをマスターした。ローマ字入力とかな入力。
コンピューターのキーボードの話をします。
最初に自分のキーボードを手にしたのはたしか高校生のとき、パソコンではなくワープロ専用機でした。現物はとうに捨てましたし、写真もありませんし、もはや型番も覚えていませんが、エプソン製で、画面表示が4行か5行だったと思います。見てくれとしてはほぼこういうかんじです。
→「【短期特集】40年目を迎えた「EPSON」ブランドの歴史を紐解く」記事中の「ワードバンクF」(PC Watch)
漢字はJIS第1水準しか内蔵していませんでした。第2水準の漢字を使うためにはオプション品のROMを買う必要がありましたが、それを追加しても漢字を出せるようになるだけであって、かな漢字変換はしてくれません。第2水準の漢字を使うたびに漢和字典のようなものでJISコードを調べて入力するのです。これも現物はとうに捨てましたが、三省堂から出ていた黄色い表紙のこれだったと思います。紙面デザインがすごく凝っていたような気がするのですが、あれは誰の仕事だったのでしょう。
→三省堂編修所『ワープロ漢字辞典』(アマゾン)
さてキーボードですが、ワープロの性能はともかく、キーボードはまごうことなきQWERTYです。当時、かな入力派とローマ字入力派の争いはずっと熾烈だったような気がします。受験生だったぼくは、①覚えるキーが少ないから、②英語も打てるから、③キーが3段なら指が届くからという理由で、ローマ字入力を選んだぽいです。
これもいったいどこから知識を仕入れてきたのか、あるいはワープロのマニュアルに書いてあったような気もしますが、ホームポジションというものがあると知り、新聞の名物コラムを毎日写して自習しました。1週間でおおむねマスターできたと思います。若いっていいですね。
早いうちにローマ字入力をマスターできたためか、ローマ字入力への抵抗はありません。かな入力派からは、キーを打つ数が2倍近くなるということと、「こんにちは、は、konnitiwaではない。それは日本語の思考ではない」ということがデメリットとして言われますが、ローマ字に変換して負荷がかかっているという意識はありません。もっとも、単に習慣になっているから自覚していないだけかもしれません。
最初からローマ字入力でよかったと思うのは、IT系のライターになってしまったいまも英単語を入力するのに負荷を感じずに済むことです。「昨日、Evernoteのアップデートが云々」「右端のRemoveボタンをクリック」というような英単語混じりの文章を書くときでも、脳内のキー配列を変えなくて済みます。器用に変えられる人もいると聞きますが、ぼくには難しそうです。
ただしNICOLA配列、いわゆる親指シフトには興味があります。もしも英単語を含まない文章を大量に書く必要がある職業に就いたなら、いまからでも親指シフトをマスターしたいと思います。小説家やシナリオライターにかな入力や親指シフトの方が多いのはたいへんよくわかります。
英単語を含む文章を書く必要があっても、固有名詞だけなら片端から辞書登録してもよさそうですし、ATOKの和英辞書を使って変換すれば「りむーぶ」と入力して「Remove」と変換してもらうこともできるので、いまでもその気になればNICOLA配列へ乗り換えてもいいようにも思えます。
ぼくの文章には我ながらすごく距離を感じます。なにかしら常にクッションを挟んでいるような気がします。おまえの本は翻訳みたいだとも言われます。いまの職業としてはそれでもいいのだと思いますが、もしかするとローマ字入力にも原因があるのかもしれません。